保税倉庫(保税蔵置場)とは?メリットや選び方を解説

MGL広報

輸入ビジネスを行う企業にとって、貨物の保管や通関のタイミングは、コストや業務効率を左右する重要な要素です。中でも「保税倉庫」は、正式な輸入手続きの前に貨物を一時保管でき、近年ますます注目を集めています。

保税倉庫とは輸入手続きを行う前の貨物を一時保管する倉庫のこと

保税倉庫とは、海外から到着した貨物を正式な輸入手続きの前に一時的に保管できる倉庫のことです。「保税地域」とも呼ばれ、関税法にもとづいて税関の監督下で運営されています。

保税倉庫に保管されている貨物は「外国貨物」として扱われ、日本国内に輸入されたものとはみなされません。そのため、関税や消費税の支払いは一時的に保留されます。これにより、輸入のタイミングを柔軟に調整でき、頻繁に輸出入を行う企業にとってはコストやキャッシュフローの最適化につながります。

保税倉庫と一般倉庫との違い

保税倉庫と一般倉庫の最大の違いは、保管できる貨物の種類と通関手続きの有無にあります。保税倉庫では関税が支払われておらず輸入許可が下りる前の「外国貨物」を保管しますが、一般倉庫で保管できるのは関税が支払われた、もしくは日本国内で生産された「内国貨物」のみです。

そのため、保税倉庫では輸入の時期や販売のタイミングを見極めながら貨物を保管できます。一方、一般倉庫は国内向けの物流や保管に特化しており、貨物を効率的に流通させるための施設です。

物流倉庫について、詳しくは下記をご確認ください。

物流倉庫とは?種類や役割、活用するメリットを解説

保税地域の種類

保税地域とは、外国貨物を一定期間保管や加工、展示できるエリアの総称です。保税倉庫も保税地域のひとつである「保税蔵置場」に区分されます。保税地域は、利用目的や貨物の性質に応じて、下記のような種類があります。

■保税地域の種類と用途

種類 主な機能 蔵置期間 設置の手続き
指定保税地域(関税法第37条) 外国貨物の積卸、運搬、一時蔵置 コンテナヤードなど 1ヵ月 財務大臣の指定
保税蔵置場(関税法第42条) 外国貨物積卸、運搬、蔵置 倉庫、上屋など 2年(延長可) 税関長の許可
保税工場(関税法第56条) 外国貨物を原料とする加工・製造 食品加工場、造船所、製鉄所、製油所など 2年(延長可) 税関長の許可
保税展示場(関税法第62条の2) 外国貨物の展示、使用 博覧会、見本市、展示会など 税関長が必要と認める期間 税関長の許可
総合保税地域(関税法62条の8) 外国貨物の積卸、運搬、長期蔵置、加工・製造、展示 中部国際空港など 2年(延長可) 税関長の許可

参考:財務省税関局「保税蔵置場の新規許可申請に関するガイドライン

外国貨物の短期間の保管には「指定保税地域」、加工が伴う場合には「保税工場」、加工から製造、展示、保管まで総合的な機能が必要な場合は「総合保税地域」など、用途や貨物の特性に応じて、最適な保税地域を選ぶことが大切です。

保税倉庫を使うメリット

保税倉庫を利用すると、関税や消費税の支払いを先送りできるだけでなく、物流面やコスト面でも多くのメリットがあります。ここでは、企業が保税倉庫を利用する際に得られる主なメリットを紹介します。

<保税倉庫を使うメリット>

・関税や消費税を支払う前の貨物を安全に保管できる

・輸入の意思決定を柔軟にできる

・輸送の手間やコストの削減につながる

・貨物の長期保管、加工、展示、売買契約の締結ができる

関税や消費税を支払う前の貨物を安全に保管できる

保税倉庫を利用すれば、関税や消費税を支払う前の貨物を、安全かつ適正に保管できるメリットがあります。保税倉庫では、税関のもとで関税や消費税を支払う前の貨物を適正に保管することが義務付けられています。そのため、貨物の不正流通や紛失のリスクが低いのも特徴です。

輸入の意思決定を柔軟にできる

保税倉庫に貨物を預けると、蔵置期間内であれば輸入申告のタイミングを自由に設定できるメリットもあります。関税や消費税の支払いを先送りにできるため、販売計画や市場の動向を見極めた上で、最適なタイミングで輸入手続きを行えます。

輸送の手間やコストの削減につながる

保税倉庫を利用すると、輸送の手間やコストの削減につながるメリットもあります。保税倉庫に保管している間は関税や消費税が発生しないため、税金の支払いを先送りでき、資金繰りや在庫管理のコストを抑えることができます。

貨物の長期保管、加工、展示、売買契約の締結ができる

保税倉庫では、販売先が未定の貨物でも一時的に保管できるほか、展示会や見本市での使用を目的とした展示も可能です。さらに、検品・仕分け・ラベル貼付・包装などの流通加工や、食品の加熱・洗浄・選別などの処理も、保税状態のままで行えます。

また、関税や消費税を支払う前でも、貨物の所有権を移転する売買契約(名義変更)を結ぶことが認められており、物流だけでなく、取引(商流)の調整にも対応できるメリットがあります。

保税倉庫を使う際の注意点

保税倉庫の利用は多くのメリットがある一方で、法令の順守や管理体制の整備など、注意すべき点も少なくありません。ここからは、企業が保税倉庫を利用する際に押さえておくべき注意点を3つ紹介します。

法令や保管期限の遵守が求められる

保税倉庫を利用するには、貨物の搬入、検査、輸入申告、輸入許可、出庫といった一連の手続きを関係法令に則って行う必要があります。手続きに不備があれば、違法とみなされる可能性もあるため、企業側は正確かつ丁寧な対応が不可欠です。

また、保税倉庫を始めとする保税地域には保管期間の制限があり、一定期間を超える場合は延長申請が必要となります。税関への定期的な報告義務や検査対応もあるため、企業側でも期限管理や申請体制を含む管理体制を整えておくことが重要です。

手続きが煩雑なため管理コストがかかる

保税倉庫の利用には、輸入申告や出庫申請などの複雑な手続きが伴い、通関や税務に関する専門知識が求められます。そのため、企業側は専門人材を確保するか、業務の一部を外部に委託するといった体制の整備が必要です。

保税倉庫の手続きには時間と人手が必要なため、結果としてコストが増大する可能性もあります。

保管できる貨物に制限があるケースもある

保税倉庫は、すべての貨物を保管できるわけではありません。例えば、危険物や生鮮食品、医薬品などの特殊な貨物については、専用の設備や許可が必要な場合もあります。

また、倉庫ごとに対応できる貨物の種類や保管条件が異なるため、保管したい貨物が対象となるかを事前に確認することが重要です。

危険物について、詳しくは下記をご確認ください。

危険物倉庫とは?保管できるものや建設で守るべき法令を解説

保税倉庫を利用した輸入の手順

保税倉庫を利用する際には、貨物の搬入から出庫までに複数の手続きが必要です。特に輸入申告や他法令への対応には専門的な知識が求められるため、事前の準備が欠かせません。ここでは、保税倉庫を利用した輸入の流れを5つのステップに分けて解説します。

<保税倉庫を利用した輸入の手順>

1 保税倉庫の利用を依頼

2 税関の許可を得てから搬入

3 他法令の対応と検査

4 輸入申告

5 輸入許可と出庫

1 保税倉庫の利用を依頼

保税倉庫を利用する場合は、まず専門の事業者に依頼する必要があります。その際、通関手続きを自社で行うのか、外部に委託するのかによって、下記のように依頼先が異なります。

事業者の種類 主な対応範囲 利用シーンの例
倉庫事業者 貨物の保管業務 自社で通関をする場合に、保税倉庫だけを利用したい
通関事業者 貨物の保管、通関手続き 保税倉庫の利用のほかに、通関業務も委託したい
フォワーダー(国際物流業者) 貨物の国際輸送手配、保管、通関手続き、配送 輸送から通関、保管までワンストップで依頼したい

特にフォワーダーは、国際輸送、保管、通関、配送といった輸入手続き全体の管理を任せたい場合に最適です。近年はフォワーダーと通関業者の業務範囲が重なるケースも増えており、ワンストップで代行する事業者もあります。

例えば、三井物産グローバルロジスティクス(MGL)はフォワーダーとして国際輸送・倉庫管理・通関をワンストップで提供しています。貨物のセキュリティ管理と法令順守体制が整備された事業者として国から「AEO」の認定を受けており、関係法令に精通した専門スタッフが適正かつ迅速な輸出入通関をサポートします。

さらに、在庫の適正化やリードタイム短縮に関するコンサルティングサービスも行っています。通関手続きのみの対応も可能です。

MGLの通関サービスについて、詳しくは下記をご確認ください。

通関|物流|三井物産グローバルロジスティクス

2 税関の許可を得てから搬入

保税倉庫を選定したら、貨物の陸揚げ前に「外国貨物の仮陸揚届」を税関に提出し、許可を得てから陸揚げ、搬入手続きをします。保税倉庫に搬入された貨物は、まだ輸入申告が行われておらず、「外国貨物」として保管されます。

3 他法令の対応と検査

保税倉庫に貨物を搬入した後は、貨物の種類によって「食品衛生法」「植物防疫法」「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」など、さまざまな法令にもとづく検査や許可・承認が必要になります。

これらの対応には時間を要することもあるため、関係機関との調整や手続きの確認を事前に行い、スケジュールに余裕をもたせておくことが大切です。

4 輸入申告

他法令の確認や許可・承認が完了したら、保税倉庫を管轄する税関に対して正式な輸入申告を行います。輸入申告の際には、貨物が到着時に発行される「貨物到着通知書(Arrival Notice)」をはじめとした下記の書類を準備して、保税倉庫が管轄する税関に提出します。

<輸入申告に必要な書類の例>

・貨物到着通知書(Arrival Notice)

・輸入(納税)申告書

・仕入書(インボイス)

・包装明細書

・船荷証券または海上運送状(航空貨物については、航空貨物運送状)

・運賃明細書

・保険料明細書

<貨物の種類によって必要な主な書類>

・他法令の許可・承認証

・特恵原産地証明書

・減免税明細書

参考:税関「1107 輸入申告の際に必要な書類(カスタムスアンサー)

このほか、通関業者を通して輸入申告する場合は、「通関依頼書」の提出も必要です。

5 輸入許可と出庫

税関の審査を経て、関税および消費税の納付が完了すると、正式に輸入許可が下ります。財務省「第13回 輸入通関手続の所要時間調査結果について」によると、輸入通関手続きの所要時間は、海上貨物で平均54.3時間(2.3日)、航空貨物で平均23.3時間(1.0日)です(2024年6月時点)。

輸入許可が下りた貨物は「内国貨物」として認定され、国内流通が可能になり、保税倉庫から貨物を出庫できます。

保税倉庫の選び方

保税倉庫を選定する際は、単に貨物を保管できるかだけでなく、コストや利便性、設備の充実度など、さまざまな観点から比較・検討することが大切です。ここでは、倉庫選びで押さえておきたいポイントを紹介します。

輸送コストを抑えられる場所に保税倉庫はあるか

保税倉庫を選ぶ上で重要なのが立地です。港や空港に近い場所にある倉庫を選べば、貨物の搬入や配送にかかる時間とコストを大幅に削減できます。

また、国内配送の起点としても利便性が高いエリアを選べば、物流全体の効率化にもつながります。

倉庫内設備やサービスが十分に整備されているか

保税倉庫を選ぶ際は、事前に倉庫の設備内容を確認し、その環境が保管したい貨物に適しているかどうかを確認しましょう。貨物の種類によっては、温度管理や冷蔵・冷凍設備、特別な保管条件が必要になる場合があります。

また、通関のほかにも、検品やラベル貼付、簡易加工など、輸送手続きまで一括で対応できるサービスがあれば、手間を減らし業務を効率化できます。保管機能だけでなく、周辺サービスの充実度も選定の重要なポイントです。

保税倉庫を利用するなら三井物産グローバルロジスティクス

保税倉庫を活用することで、税金の支払時期を調整したり、在庫リスクを抑えたりといった多くのメリットが得られます。こうした保税業務を安全かつスムーズに行うには、信頼できる事業者の選定が欠かせません。

三井物産グローバルロジスティクス(MGL)は、千葉県・市原市に常温一般品、指定可燃物を扱う保税倉庫「市原IMT保税蔵置場」を保有するほか、国外にも保税物流ネットワークを持ち、関税手続きや輸送、配送をワンストップで対応可能です。また、AEO制度の認定事業者であり、さまざまな通関手続きの特例措置が受けられ、輸出入通関手続のリードタイム短縮を図れます。

保税倉庫の導入を検討する際は、MGLのサービスをぜひご確認ください。

よくある質問ーMGLが答えますー

Q. 保税倉庫とは何ですか?

A. 保税倉庫とは、海外から到着した貨物を正式な輸入手続きの前に一時的に保管できる倉庫のことです。「保税地域」とも呼ばれ、関税法にもとづいて税関の監督下で運営されています。

詳しくは「保税倉庫とは輸入手続きを行う前の貨物を一時保管する倉庫のこと」をご確認ください。

Q. 保税倉庫を使うメリットは何ですか?

A. 保税倉庫を使うメリットは、「関税や消費税を支払う前の貨物を安全に保管できる」「輸入の意思決定を柔軟にできる」「輸送の手間やコストの削減につながる」「貨物の長期保管、加工、展示、売買契約の締結ができる」などです。保税倉庫を利用する際は、倉庫事業者やフォワーダー(国際物流業者)に依頼する必要があります。

詳しくは「保税倉庫を使うメリット」をご確認ください。

Q. 三井物産グローバルロジスティクスの保税倉庫で扱える貨物は何ですか?

A. 三井物産グローバルロジスティクスの保税倉庫で扱える貨物は、常温一般品と指定可燃物です。千葉県・市原市に保税倉庫「市原IMT保税蔵置場」を保有するほか、国外にも保税物流ネットワークを持ち、関税手続きや輸送、配送をワンストップで対応可能です。

詳しくは「保税倉庫を利用するなら三井物産グローバルロジスティクス」をご確認ください。

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