通関とは?申告方法や書類、手続きの流れをわかりやすく解説
2025年7月24日
- カテゴリ:国際複合一貫輸送カテゴリ:通関
MGL広報
通関とは?申告方法や書類、手続きの流れをわかりやすく解説
貨物の輸出入に欠かせない「通関」は、複雑な手続きや専門用語が多く、知識、経験のない方は戸惑うことも少なくないでしょう。特に税関への申告、関税の納付、関連法令の遵守といった対応には、専門知識が必要になる場面も多く、一般的に通関業務に慣れた人や通関業者のサポートが必要です。
この記事では、通関手続きの基本の流れや申告に必要な書類、関連法令のほか、通関業務を外部に委託するメリットをわかりやすく解説します。
通関とは、輸出入に必要な手続きのこと
通関とは、輸出または輸入される貨物について、品目、数量、金額、輸出であれば貨物の仕向け先などを税関に申告し、許可を受ける手続きのことです。貨物が国境を越えて移動する際には、税関の許可を得てからでないと原則として輸出入できません。
通関の主な目的
通関には、貨物の輸出入に関わる貨物を適正に管理し、国や社会を守るといった目的があります。通関の主な目的は、下記の3つになります。
<通関の主な目的>
・貨物の品目や安全管理
・適正な関税・消費税の徴収
・貿易統計の基礎データの作成
例えば、不正薬物や違法に輸出入される銃器、知的財産侵害物品などの違法貨物の不正輸出入を防ぐとともに、関税の徴収により国内産業を保護する役割も果たしています。また、通関によって得られたデータは、国の経済政策や企業の経済活動に幅広く活用されています。
輸出通関と輸入通関の違い
通関には、日本から外国へ貨物を出す際に必要な「輸出通関」と、外国から日本へ貨物を持ち込む際に必要な「輸入通関」があり、それぞれ目的や関税の支払いなどが異なります。輸出入を円滑に進めるためには、両者の違いを正しく理解することが重要です。
■輸出通関と輸入通関の違い
輸出通関 | 輸入通関 | |
対象 | 貨物を日本から外国へ送る場合 | 貨物を外国から日本に受け入れる場合 |
申告者 | 輸出者 | 輸入者 |
目的 | ・貨物の品目や安全管理
・貿易統計の基礎データの作成 |
・自国産業の保護
・税収の確保 |
他の関係法令・許認可 | 輸出貿易管理令にもとづき、武器や軍事転用可能な貨物などは経済産業大臣の許可が必要 | 他法令にもとづき、食品や植物、医療品などは関係省庁の許可や検査が必要 |
関税・消費税の支払い | 不要 | 必要 |
荷主が直面する通関の課題
通関手続きは複雑で専門性が高く、多くの荷主がさまざまな課題に直面しています。ここからは、荷主が直面する代表的な課題をご紹介します。
<荷主が直面する通関の課題>
・専門的な知見が必要
・制度変化への対応が不可欠
・マンパワー不足と属人化
専門的な知見が必要
通関では、貨物の品目や内容に応じて関税率や法令の適用が変わるため、専門的な知見が不可欠です。
例えば、世界税関機構(WCO)が定める商品分類コード(HSコード)や自由貿易協定(FTA)など国際的な枠組みはあるものの、実際の申告方法や関税率、必要書類は国によって異なります。
制度変化への対応が不可欠
関税制度はもちろんですが、地域的な包括的経済連携(RCEP)、経済連携協定(EPA)、FTAなどの貿易協定は頻繁に改正されるため、常に最新情報を把握し続ける必要があります。制度が変わるたびに申告書類や運用ルールも変わるため、通関担当者にとって、かなりの負担になります。
マンパワー不足と属人化
通関手続きは多岐にわたるため、限られた人員ですべてをこなすのは難しいのが実情です。また、専門知識が必要なため、属人化しやすい傾向もあります。その結果、急な退職や異動があると、業務の停滞や対応漏れが発生するリスクもあります。
通関に必要な書類
通関では、貨物の内容や取引条件を示す複数の書類が必要です。輸出と輸入では、下記のように必要書類が一部異なります。
<輸入時の主な通関申告書類>
・仕入書(インボイス)
・包装明細書
・船荷証券または海上運送状(航空貨物については、航空貨物運送状)
・運賃明細書
・保険料明細書
出典:税関「1107 輸入申告の際に必要な書類 (カスタムスアンサー)」
<輸入時に貨物によって必要な主な通関申告書類>
・他法令の許可・承認証(植物防疫法などの関税関係法令以外の法令による許可・承認が必要な貨物の場合)
・特恵原産地証明書(特恵関税の適用を受けようとする場合)
・減免税明細書(減免税の適用を受けようとする場合)
出典:税関「1107 輸入申告の際に必要な書類 (カスタムスアンサー)」
<輸出時の主な通関申告書類>
・仕入書(インボイス)
・包装明細書
・船積依頼書
参考:独立行政法人日本貿易振興機構「通関業者に輸出通関を依頼する際の必要書類:日本」
<輸出時に貨物によって必要な主な通関申告書類>
・輸出関係他法令の許可・承認証等(他法令該当貨物の場合)
・関税定率法等の規定により、関税の軽減、免除又は払い戻しに関連して輸出申告に際し特定の書類の提出を必要とされている貨物については、その書類
・消費税及び地方消費税を除く内国消費税の輸出免税を受ける貨物については、輸出されたことを証明する申請書等
出典:税関「5009 輸出申告の際に必要な書類(カスタムスアンサー)」
なお、通関を業者に委託する際は、輸出入どちらも「通関委任状」が必要になります。
申告から通関完了までの手順
通関手続きは、一般的に「申告→審査→検査→(納税)→許可」という流れで進みます。輸出と輸入では具体的なフローが異なるため、それぞれの手順を事前に確認しておきましょう。
■輸入通関の手順
1 保税地域への搬入
2 輸入申告(他法令手続きが必要な場合もある)
3 税関の審査・検査
4 関税などの納付
5 輸入許可
6 貨物の国内引取
■輸出通関の手順
1 保税地域への搬入
2 輸出申告(他法令手続きが必要な場合もある)
3 税関の審査・検査
4 輸出許可
5 輸出許可後に船積み・搭載
電子申告システム「NACCS」により手続きのデジタル化が進み、スピーディーな手続きが可能になっていますが、貨物の種類や仕向地によっては通関に時間がかかるケースもあるため、余裕を持って申告するのが大切です。特に初めての申告や、法令規制の対象品目を扱う際は、慎重に準備をしましょう。
通関に関わる法令
通関手続きには、関税法だけでなく、多くの法令が関係しています。ここからは、通関時に特に重要となる法令を紹介します。
<通関に関わる法令>
・輸出時に関わる「輸出貿易管理令」
・輸入時に関わる「他法令」
・輸出入どちらにも関わる「関税法」
輸出時に関わる「輸出貿易管理令」
「輸出貿易管理令」は、外国為替及び外国貿易法(外為法)にもとづいて安全保障の観点から制定された政令です。大量破壊兵器や武器、またはそれらに転用可能な貨物や技術が、不適切な国や地域に流出しないよう管理することを目的としており、対象となる貨物を輸出する場合には経済産業大臣の許可が必要になります。
万が一、許可を得ずに輸出すると、企業や個人に対して行政処分や刑事罰が科される可能性もあります。
輸入時に関わる「他法令」
輸入通関では、貨物の種類によって多くの国内法令、いわゆる「他法令」が適用されます。輸入関係の他法令は日本国内の安全や環境保全、健康の維持などを目的としており、2025年6月現在で29にもおよびます。
<輸入通関に関する主な法令>
・銃砲刀剣類所持等取締法
・毒物及び劇物取締法
・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
・肥料の品質の確保等に関する法律
・砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律
・化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
・食品衛生法
・植物防疫法
・高圧ガス保安法
参考:税関「輸入関係他法令一覧表」
これらの法令に違反すると、通関が停止されたり、罰則を受けたりするリスクがあります。輸入申告時には、必要書類を正確に整えた上で、該当法令に適切に対応することが求められます。
輸出入どちらにも関わる「関税法」
「関税法」は、通関手続きや納税義務、罰則などを定めている法律です。輸入時には関税法にもとづき、関税・消費税の納付が求められます。輸出時は関税が課されないものの、通関手続きが正しく行われていないと、相手国での税関処理に影響する可能性があります。
関税は複雑なため、「事前教示制度」により関税分類や原産地、関税評価などを税関に事前確認することで、通関をスムーズに行えます。
通関の際に無駄な出費を抑えるポイント
通関業務では、ちょっとした手続きミスが大きなコストにつながることがあります。下記で紹介するポイントを踏まえれば、通関時に不要な出費を避けることができます。
HSコードを間違えないようにする
通関コストを抑える上で重要なポイントは、HSコードを正確に申告することです。HSコードを間違えると、不要な関税や規制の対象となり、費用と手間の両面で無駄が発生します。
日本では、6桁の国際共通コードに加えて、国内細分の3桁を合わせた9桁の統計品目番号が使われています。HSコードは税関のWebサイトで確認できるほか、判断に迷う場合は「事前教示制度」でも確認できます。
関税優遇制度を利用する
輸入時にかかる関税は、優遇制度を活用することで削減できます。代表的な制度は、下記の2つがあります。
<関税が優遇される制度>
・一般特恵関税制度(GSP):特定の発展途上国からの輸入品に対して、原産地証明書(FORM-A)を提出することで、関税が軽減、もしくは免除される
・経済連携協定(EPA):協定国との間で定められた原産地証明書などを提出すると、最恵国待遇(MFN)よりも低い関税が適用される
これらの制度は申請に手間がかかるものの、関税の削減に効果的です。
通関手続きを委託するメリット
通関は自社で行うことも可能ですが、法令対応や専門知識が求められるため、通関業者への委託が一般的です。
通関業者を利用すると、通関に関する業務を一任できるほか、荷主側の担当者は本来の業務に集中でき、業務効率化が促進されます。また、AEO(認定通関業者)制度に対応した業者であれば、通関検査や通関手続きの簡素化も可能で、通関手続きをよりスピーディーに行えるメリットもあります。
通関業務を含めた海上輸送や航空輸送はMGLがおすすめ
通関業務は、専門知識と最新の制度理解が求められるため、企業にとっては負担の大きい業務の1つです。HSコードの確認や書類準備、他法令の対応など、細かな作業を正確にこなすには、多大な時間と労力が必要になります。
年間1万件を超える通関実績とAEO認証を持つ三井物産グローバルロジスティクス(MGL)なら、通関の専門知識に加え、海上輸送や航空輸送、倉庫管理、現地調達・納品先への配送など輸出入に関する物流業務を一貫して対応できます。
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よくある質問ーMGLが答えますー
Q. 通関とは何ですか?
A. 通関とは、輸出または輸入される貨物について、その送り先や品目、数量、金額などを税関に申告し、許可を受ける手続きのことです。また、通関の主な目的は「貨物の品目や安全管理」「適正な関税・消費税の徴収」「貿易統計の基礎データの作成」になります。
詳しくは「通関とは、輸出入に必要な手続きのこと」をご確認ください。
Q. 通関に必要な書類を教えてください。
A. 輸入時の主な通関申告書類は、「仕入書(インボイス)」「包装明細書」「船荷証券または海上運送状(航空貨物については、航空貨物運送状)」「運賃明細書」「保険料明細書」などです。輸出時は「仕入書(インボイス)」「包装明細書」「船積依頼書」などが必要です。
貨物によっては、他法令の許可・承認証なども必要になることがあります。また、通関を業者に依頼する場合は「通関委任状」も準備しましょう。
詳しくは「通関に必要な書類」をご確認ください。
Q. 輸入・輸出の申告から通関完了までの手順を教えてください。
A. 通関手続きは、一般的に「申告→審査→検査→(納税)→許可」という流れで進みます。輸入通関の手順は、「1 保税地域への搬入」「2 輸入申告(他法令手続きが必要な場合もある)」「3 税関の審査・検査」「4 関税などの納付」「5 輸入許可」「6 貨物の国内引取」です。
また、輸出通関の手順は、「1 保税地域へ搬入」「2 輸出申告(他法令手続きが必要な場合もある)」「3 税関の審査・検査」「4 輸出許可」「5 輸出許可後に船積み・搭載」となります。
詳しくは「申告から通関完了までの手順」をご確認ください。
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