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B/L(船荷証券)とは?貿易での役割や記載内容・発行からの流れを解説
貿易実務の現場では、さまざまな書類を正確に理解し、扱うことが求められます。中でも、インボイスやパッキングリストと並び、頻繁に登場する書類が「B/L(Bill of Lading:船荷証券)」です。B/Lは取引の安全性やスピード、信頼関係の構築にも影響する重要な役割を担っています。
この記事では、B/Lの基本的な役割や記載内容、種類などをわかりやすく解説します。
B/L(船荷証券)とは船会社が貨物を受け取った証明書のこと
B/Lとは、貨物の所有権を示す有価証券のことであり、船会社との輸送契約書、貨物受取証でもあります。B/Lは船会社やフォワーダーなどの運送人から通常3通発行され、それを受け取った輸出者が輸入者に航空便などで送付します。船が着いたときに輸入者がB/Lを持っていないと、貨物を引き取ることはできません。
貨物の所有権の移転や運送契約の証明にも関わるため、適切な取り扱いが求められます。
また、B/Lは紙での発行が一般的ですが、近年では電子版「eB/L」の導入も進んでいます。電子化によって書類の郵送コスト削減やリードタイム短縮が期待されていますが、法整備や業界全体での技術面の規格化がまだ発展途上であり、完全な普及には至っていません。そのため、現在も実務では紙のB/Lが主流となっています。
フォワーダーについて、詳しくは下記をご確認ください。
フォワーダー(forwarder)とは?役割やメリット・乙仲との違いを解説
B/Lの主な役割
B/Lは単なる輸送書類ではなく、貿易実務において複数の役割を担っています。B/Lが果たす代表的な役割は下記の4つです。
■B/Lの役割
| 役割 | 内容 |
| 貨物の所有権を示す有価証券 | B/Lの譲渡(裏書:Endorsement)によって所有権の第三者への移転が可能。信用状取引(L/C決済)では代金回収の権利にもなる |
| 貨物の受領証 | 船会社が貨物を受け取ったことを証明する |
| 運送契約の証拠書類 | 輸送経路や貨物内容などの概要を明示し、運送人と荷主の運送契約を示す |
| 貨物の引き渡し証 | 到着地でB/Lを差し入れると、貨物の引き取りが可能になる |
上記のようにB/Lは有価証券としての性質を持つため、輸入者はB/Lを船会社に差し入れることで貨物を引き取ることができます。また、信用状取引においては、輸出者がB/Lを銀行に提出して代金を受け取り、輸入者は代金を支払ってB/Lを入手することで、貨物を引き取るという流れが一般的です。
B/L発行のタイミングと、その後の流れ
■B/Lの発行のタイミングと、その後の流れ

| ステップ | 担当者 | 内容 | |
| 1 | 貨物の引き渡し | 輸出者→船会社やフォワーダー | 輸出者が貨物を船会社に引き渡す。コンテナ搬入や本船積み込みなどを行う |
| 2 | B/Lの発行 | 船会社やフォワーダー→輸出者 | 本船積み完了後、Shipped B/Lが発行される
※状況によって船会社が貨物を受け取った時点で発行されるReceived B/Lの場合もある |
| 3 | B/Lの送付 | 輸出者→輸入者 | オリジナルB/Lを輸入者に送付。信用状取引では、輸出者→銀行→輸入者の流れで取り扱われる |
| 4 | D/O(Delivery Order:荷渡し指図書)との交換 | 輸入者→船会社やフォワーダー | 輸入者はオリジナルB/Lを提示し、船会社からD/Oを受け取る |
| 5 | 貨物の引き取り | 輸入者 | 輸入者がD/Oを港に差し入れ、貨物を正式に引き取る。書類不備や紛失時は引き取り不可となる |
コンテナ輸送について、詳しくは下記をご確認ください。
B/Lに記載される主な内容
B/Lは、貨物の所有権や運送契約を証明する重要書類のため、記載される内容には明確なルールがあります。誤記載があると修正費用や、仕向け国での税関によるペナルティが発生するため注意が必要です。B/Lの主な記載項目は下記のとおりになります。
■B/Lの記載内容

| 項目番号 | 内容 |
| 1 | 荷送人(Shipper)※輸出者が荷送人となることが多いが、これに限らない |
| 2 | 荷受人(Consignee)※輸入者が荷受人となることが多いが、これに限らない |
| 3 | 貨物の到着案内先(Notify Party) |
| 4 | 運送人名 |
| 5 | B/L番号 |
| 6 | 貨物の受け取り地 |
| 7 | 本船名 |
| 8 | 船積港 |
| 9 | 陸揚港 |
| 10 | 貨物引き渡し地 |
| 11 | 貨物詳細欄(品名、数量、重量、容積、コンテナ本数、荷姿、マーク、コンテナ番号など) |
| 12 | B/Lの発行枚数※オリジナルB/Lの場合、慣例上3通発行される。ただし、必ず3通でなければならないという制約はない |
| 13 | B/Lの発行地および発行日 |
| 14 | 運送人の署名 |
| 15 | 船積年月日 |
B/Lの種類と特徴
B/Lにはさまざまな種類があり、取引条件や輸送形態に応じて使い分けられます。種類ごとの性質を理解することで、実務上のトラブルを避け、スムーズな輸送や交渉を実現できます。代表的なB/Lの種類と特徴は下記のとおりです。
■主なB/Lの種類と特徴
| 種類 | 概要 | 主な特徴・用途 |
| オリジナルB/L(Original B/L) | 貨物の所有権を示す最も基本的なB/L | ・慣例上、基本的に3通発行され、輸出者から輸入者へ郵送される
・貨物引き取りの際に原本提示が求められる ・信用状取引で必要な決済書類(有価証券)とされる |
| サレンダードB/L(Surrendered B/L) | 現地船会社は荷送人の裏書がされた発行済みB/Lの全通を元地回収(Surrender)することで、有価証券としての権利が放棄される。荷受人は原本を持たずに貨物を引き取れる | ・書類郵送不要で迅速な引き渡しが可能になる
・貨物の到着が書類到着より早い場合や近隣国間の取引で利用される ・信用リスク管理が重要になる ・法律や国際規則で定められた制度ではないが、実務上広く使用されている |
| 指図式船荷証券(Order B/L) | 所有権の譲渡が可能なB/L | ・貨物の所有権を柔軟に移転できる
・荷受人欄に「To Order」と記載することで、特定の荷受人を指定しない。裏書により所有権の譲渡が可能 ・白地裏書の場合、B/Lを持つ者が貨物を引き取れるため、流通性が高い |
| 記名式B/L(Straight B/L) | 指定された荷受人のみに引き渡されるB/L | ・荷受人(Consignee)欄に特定の荷受人名(企業や個人)が記載されているため、譲渡性はない
・信頼関係のある取引先間で使われ、貨物の引き渡し先が限定される |
| 定期船船荷証券(Liner B/L) | 定期船利用時に発行されるB/L | ・スケジュールが固定化され、船会社の責任が明確
・個品やコンテナ輸送などで広く利用される |
| 傭船契約船荷証券(Charter Party B/L) | 不定期船(Tramper)を全部もしくは一部貸し切る傭船契約にもとづき発行されるB/L | ・契約条件は傭船契約書(Charter Party)に従う
・一般的に傭船契約書を締結した船積みで発行される ・B/L欄外に「issued pursuant to charter party dated~」の記載が一般的 |
| 複合運送証券(Combined Transport B/L) | 海上・陸上・航空など複数の輸送手段を組み合わせた一貫輸送を対象とするB/L | ・「Through B/L」とも呼ばれる
・ドア・ツー・ドアの物流に対応 ・国際フォワーダーが発行するケースが多い |
B/LとWaybillの主な違い
貿易実務では、B/Lと並んで「Waybill」という書類もよく利用されます。両者は似た役割を持つ一方で、下記のように有価証券性や取引での使い方に大きな違いがあります。
■B/LとWaybillの主な違い
| B/L | Waybill | |
| 有価証券性 | ある(所有権の譲渡が可能) | ない(譲渡不可) |
| 信用状取引(L/C決済) | 可能(担保書類となる) | 不可(担保性がない) |
| 書類の取り扱い | 原本郵送・裏書・提示が必要 | 原本の輸送不要 |
| 手続き | 複雑で時間がかかる | 簡略化されてスピーディー |
| リスク | 書類の遅延、紛失リスクがある | 輸出者に代金未回収リスクがある |
このように、B/Lは「所有権」「信用取引」に強みがあり、Waybillは「スピード」「簡便さ」に強みがあります。
Waybillのメリットとデメリット
Waybillを利用する場合は、メリットとデメリットを理解する必要があります。主なメリットとデメリットは、下記のとおりです。
<Waybillのメリット>
・原本の郵送が不要で、メールやFAXで送付可能なため管理が簡単
・親子会社間や、信頼関係のある相手先との取引に向いている
・電子発行・送付に対応しやすく、ペーパーレス化が進む
・B/Lの原本が不要な分、貨物の引き渡しが迅速化し、書類到着待ちによる遅延を防ぐことができる
<Waybillのデメリット>
・有価証券ではないため、代金未払いでも輸入者が貨物を受け取れる
・信用状取引には利用できない
Waybillは原本の郵送が必要なくスピーディーに手続きができますが、輸出者にとっては代金未回収リスクが高まるため、信頼関係のある取引先との間で用いられることが多くなります。
■Waybillのイメージ

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■MGLの国際複合一貫輸送をお申込み後の流れ

よくある質問ーMGLが答えますー
Q. 貿易におけるB/L(船荷証券)とは?
A. B/Lとは、貨物の所有権を示す有価証券のことであり、船会社との輸送契約書、貨物受取証でもあります。B/Lは船会社やフォワーダーなどの運送人から通常3通発行され、それを受け取った輸出者が輸入者に航空便などで送付します。船着いたときに輸入者がB/Lを持っていないと、貨物を引き取ることはできません。
詳しくは「B/L(船荷証券)とは船会社が貨物を受け取った証明書のこと」をご確認ください。
Q. B/Lの主な役割は?
A. B/Lの主な役割は「貨物の所有権を示す有価証券」「貨物の受領証」「運送契約の証拠書類」「貨物の引き渡し証」です。B/Lは有価証券としての性質を持つため、輸入者はB/Lを船会社に差し入れることで貨物を引き取ることができます。また、信用状取引においては、輸出者がB/Lを銀行に提出して代金を受け取り、輸入者は代金を支払ってB/Lを入手することで、貨物を引き取るという流れが一般的です。
詳しくは「B/Lの主な役割」をご確認ください。
Q. B/Lの種類は?
A. 代表的なB/Lの種類は下記のとおりです。
・オリジナルB/L(Original B/L)
・サレンダードB/L(Surrendered B/L)
・指図式船荷証券(Order B/L)
・記名式B/L(Straight B/L)
・定期船船荷証券(Liner B/L)
・傭船契約船荷証券(Charter Party B/L)
・複合運送証券(Combined Transport B/L)
種類ごとの性質を理解することで、実務上のトラブルを避け、スムーズな輸送や交渉を実現できます。
詳しくは「B/Lの種類と特徴」をご確認ください。
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