インコタームズのFCA(Free Carrier)とは?FAS・FOBとの違いなどを解説

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インコタームズのFCA(Free Carrier)とは?FAS・FOBとの違いなどを解説

国際貿易では、貨物の引き渡し時期やリスク移転のタイミング、費用負担の範囲が曖昧なままだと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。そうした事態を防ぐために策定された「インコタームズ(Incoterms)」の中でも、FCAは陸・海・空を問わず多様な輸送形態に対応できる柔軟な取引条件として、実務で広く採用されています。

この記事では、FCAの基本的な仕組みや国際輸送における活用メリットのほか、FAS・FOBとの違いを詳しく解説します。

FCAとは、インコタームズのFグループの取引条件の1つ

FCA(Free Carrier/運送人渡し)とは、国際商業会議所(ICC)が定める「インコタームズ2020」の取引条件の1つです。売り手の指定場所(輸出国内)において、買い手が指定した運送業者に貨物を引き渡した時点で、コストとリスクが買い手へ移転します。

FCAの引き渡し場所は工場や倉庫、港、空港など柔軟に設定可能で、海上輸送に限定されない点が特徴です。また、FCAでは売り手が輸出通関を行う義務があり、買い手は国際輸送や輸入通関を管理するため、コストとリスクのバランスが取れている条件だといえます。

■FCAの特徴

特徴 内容
コストの負担 売り手は指定場所(輸出国内)まで貨物を輸送し、輸出通関までを負担する。買い手は、その後の国際輸送・輸入通関・最終配送費用を負担する
リスクの移転 貨物が買い手の指定する運送業者に引き渡された時点で、リスクは売り手から買い手に移転する
通関手続き 輸出通関は売り手、輸入通関は買い手が手配する

■FCAのコストとリスクの範囲

インコタームズ2020について、詳しくは下記をご確認ください。

インコタームズ2020とは?2010年版との違いと変更点を図解付きで解説

通関について、詳しくは下記をご確認ください。

通関とは?申告方法や書類、手続きの流れをわかりやすく解説

インコタームズの概要とFCAの位置づけ

インコタームズ(Incoterms)とは、国際商業会議所(ICC)が1936年に制定した、国際取引における売り手と買い手の責任分担を明確にするためのルールのことです。以降、改訂が重ねられ、現行の最新版は「インコタームズ2020」となっています。

インコタームズでは、輸送形態や引き渡し場所に応じて11種類の取引条件が4つの大分類に分けられており、FCAはFグループに分類されます。Fグループには下記の3つの条件があります。

<Fグループに分類される条件>

・FCA(Free Carrier/運送人渡し)

・FAS(Free Alongside Ship/船側渡し)

・FOB(Free On Board/本船渡し)

この中でFCAは唯一、海上輸送に限定されず、航空・陸上などあらゆる輸送手段に対応可能な取引条件です。買い手の指定場所で貨物を運送人に引き渡す、という柔軟な条件設計により、特に複合一貫輸送(マルチモーダル輸送)が求められる現代の物流において、活用シーンが広がっています。

なお、インコタームズ2020では、FCAにおけるB/L(船荷証券)発行に関する実務上の課題が改善されています。

インコタームズ2010でのFCAは、買い手に指定された運送人に売り手が貨物を引き渡した時点でコストとリスクが買い手に移転する仕組みとなっていました。この仕組みでは、コンテナ船の場合は、受取船荷証券が発行されたまま、売り手の引渡しの業務が終了することとなり、信用状取引の場合に対応できないことがありました。

これに対し、インコタームズ2020では、当事者間に契約上の合意がある場合、買い手は手配した運送人に対し、「On Board Notation(積込済)」という文言のあるB/L(船荷証券)を売り手宛に発行するように指示しなければならないと明記されています。

この変更により、売り手はFCAでもL/C(信用状)取引に必要なShipped B/Lを受け取れるようになり、実務での利便性がさらに向上しています。

B/L貿易について、詳しくは下記をご確認ください。

B/L(船荷証券)とは?貿易での役割や記載内容・発行からの流れを解説

FCAとFAS・FOBの違い

FCAとFAS(Free Alongside Ship/船側渡し)・FOB(Free On Board/本船渡し)はいずれもFグループに分類されますが、適用できる輸送手段やリスク移転のタイミングに違いがあります。

FCAはあらゆる輸送手段に対応しており、売り手が買い手の指定した運送業者に貨物を引き渡した時点で、コストとリスクが買い手に移転する条件です。輸出通関は売り手が行います。

FASは海上輸送のみで、売り手が貨物を本船の船側に並べた時点でリスクが買い手に移転します。港での荷役費用は買い手が負担し、輸出通関は売り手が行う条件です。

FOBもFASと同様に海上輸送のみですが、売り手が貨物を本船に積み込んだ時点でリスクが買い手に移転します。港での積み込み費用やリスクは売り手負担です。

FCAはFASやFOBと比べて、輸送手段の自由度が高く、荷積みの負担がない柔軟な条件です。コンテナ輸送や航空輸送、陸上輸送を組み合わせる現代の物流では、FCAに適した場面が増えています。

FCA・FAS・FOBの違い

FCAとEXW・CIF・DDPの違い

FCAは、EXW(Ex Works/工場渡し)より売り手の負担が大きく、DDP(Delivered Duty Paid/関税込持込渡し)より売手の負担が小さい中間的な条件と位置づけられます。

EXWは売り手の負担が最も小さく、工場や倉庫などの売り手の施設で貨物を引き渡した時点でリスクが移転します。CIF(Cost, Insurance and Freight/運賃・保険料込み)は、売り手が本船に貨物を積み込むまでのコストとリスクを負い、さらに仕向港までの運賃と保険料を負担する条件です。DDPは、売り手が輸入通関までのすべての費用とリスクを負担し、買い手は荷卸作業のみ負担します。

■FCAとEXW・CIF・DDPの違い

項目 FCA EXW CIF DDP
費用負担(売り手) 国内輸送+輸出通関 最小 本船積込+保険・運賃 最大(輸入通関まで)
リスク移転 運送人への引き渡し時点 売り手施設で引き渡し時点 本船への積込完了時 買い手所在地で荷卸前
対応輸送手段 制限なし 制限なし 海上輸送のみ 制限なし
輸出通関 売り手 買い手 売り手 売り手
輸入通関 買い手 買い手 買い手 売り手

DDPについて、詳しくは下記をご確認ください。

インコタームズのDAP(仕向地持込渡し)とは?DDP・DPUとの違いを解説

FCAが注目される理由

FCAは、売り手と買い手の間でバランスの取れた責任分担ができるため、実務で広く利用されている取引条件です。ここでは、FCAが国際物流の現場で注目される理由について解説します。

コストとリスクのバランスが良い

国際貿易においてFCAが注目される理由としては、コストとリスクのバランスが良い点が挙げられます。

売り手の施設で引き渡すEXWは買い手の負担が大きく、買い手の所在地まで売り手がリスクを抱えるDDPでは売り手の負担が大きくなります。

一方、FCAでは売り手が国内輸送と輸出通関までの責任を負い、買い手は国際輸送と輸入通関、最終配送以降を手配するため、双方にとって負担のコントロールがしやすく、実務上非常に使い勝手の良い条件といえるでしょう。

複合一貫輸送(マルチモーダル輸送)への対応力が増す

複合一貫輸送(マルチモーダル輸送)に対応できる点も、FCAが注目される理由の1つといえます。現代の物流では、海上・航空・陸上輸送を組み合わせた複合一貫輸送(マルチモーダル輸送)が主流です。FCAは引き渡し場所を港・空港・倉庫などから自由に設定でき、海上輸送に限定されないため、複雑な物流ルートにも柔軟に対応可能です。

例えば、海上・航空・陸上輸送を組み合わせた流れでも、運送人への引き渡し場所が明確であれば、FCAを適用可能です。そのため、サプライチェーン全体の最適化も可能になるでしょう。

MGLの国際複合一貫輸送について、詳しくは下記をご確認ください。

国際複合一貫輸送 | 三井物産グローバルロジスティクス

FCA契約時の注意点とトラブル防止策

FCAは柔軟性の高い取引条件ですが、引き渡し場所や通関手続きなどの細かい点が曖昧なままだと、トラブルを招く可能性があります。ここでは、FCA契約時に注意すべきポイントを解説します。

<FCA契約時の注意点とトラブル防止策>

・引き渡し場所を明確にする

・輸出通関手続きに時間と手間がかかることもある

・買い手は適切な運送業者の選定やコストの管理が必要になる

引き渡し場所を明確にする

FCA契約時には、引き渡し場所を明確にすることが大切です。買い手が指定した運送人に引き渡す場所を具体的に明記しなければ、費用やリスクの分担で誤解が生じる可能性もあります。

例えば、売り手の工場で引き渡す場合と、港にあるコンテナヤードで引き渡す場合とでは、売り手の責任範囲やコストが大きく異なります。FCAで第三者施設を指定する場合は、誰が施設との連絡・搬入手配を行うのか、管理責任は誰にあるのかも契約書やインボイスで明確にしなければなりません。

輸出通関手続きに時間と手間がかかることもある

FCAは輸出通関手続きに時間と手間がかかることもあるため、注意が必要です。FCAでは、売り手が輸出通関を行うことになりますが、手続きには書類の準備や関係官庁との調整、貨物の検査対応などが含まれます。特に輸出規制のある貨物などは、想定以上に時間と手間がかかることもあるでしょう。

通関が遅れると、貨物の引き渡しや船積みのスケジュールにも影響し、買い手側との信頼関係に悪影響を与えかねません。こうしたリスクを避けるためには、事前にフォワーダーや通関業者と連携し、正確な手続きを心掛けることが重要です。

フォワーダーについて、詳しくは下記をご確認ください。

フォワーダー(forwarder)とは?役割やメリット・乙仲との違いを解説

買い手は適切な運送業者の選定やコストの管理が必要になる

FCAでは、運送業者の選定・手配は買い手側の責任です。国際輸送の手配や輸入通関、保険加入など多岐にわたる管理をみずから行うため、専門知識が求められます。これらの知識や経験が不足していると、輸送遅延や追加費用負担、保険未加入による損害などのリスクを招いてしまうかもしれません。

特に国際輸送では、想定外のトラブルを引き起こさないよう、信頼できる運送業者やフォワーダーと連携することが重要です。

FCAをはじめとするインコタームズを利用した国際貿易ならMGLがおすすめ!

FCAをはじめとしたインコタームズは、国際物流の責任分担を明確にし、効率的な取引を実現するために不可欠なルールです。しかし、実際の運用には高度な専門知識と、各国の通関・輸送事情への理解が求められます。

三井物産グローバルロジスティクス(MGL)なら、インコタームズ2020も含めた国際複合一貫輸送をワンストップでサポート可能です。通関手続きの代行や輸送手配、保険加入までを包括的に対応し、複雑な国際取引をスムーズに進めることができます。

MGLは全世界35ヵ国150都市の拠点を中心に、当社現地店、三井物産現地店、海外代理店等のネットワークを駆使して、海上輸送航空輸送、国内外内陸輸送のいずれにも対応可能です。さらに、アパレルから危険物重量物設備まで、さまざまな貨物に対応できるほか、保税倉庫での保管など多様なニーズに応じた物流サービスを提供します。

また、三井物産グループの物量をまとめて船会社から取得する「集約運賃」による強力な運賃仕入れ力、長年精通するパートナーとのネットワークを通じ、効率的輸送ルートおよび競争力ある運賃をご提供します。

国際物流のパートナーをお探しの場合は、三井物産グローバルロジスティクスのお問い合わせフォームよりご相談ください。

よくある質問ーMGLが答えますー

Q. FCA(Free Carrier/運送人渡し)とは?

A. FCA(Free Carrier/運送人渡し)とは、国際商業会議所(ICC)が定める「インコタームズ2020」の取引条件の1つです。売り手の指定場所(輸出国内)において、買い手が指定した運送業者に貨物を引き渡した時点で、コストとリスクが買い手へ移転します。また、FCAは海上輸送に限定されない点が特徴です。売り手が輸出通関を行う義務があり、買い手は国際輸送や輸入通関を管理するため、コストとリスクのバランスが取れている条件だといえます。

詳しくは「FCAとは、インコタームズのFグループの取引条件の1つ」をご確認ください。

Q. FCA・FAS・FOBの違いは?

A. FCA(Free Carrier/運送人渡し)とFAS(Free Alongside Ship/船側渡し)・FOB(Free On Board/本船渡し)・の違いは、適用できる輸送手段やリスク移転のタイミングです。FCAはあらゆる輸送手段に対応していますが、FASとFOBは海上輸送のみになります。また、FCAは買い手の指定した運送業者に貨物を引き渡した時点で、コストとリスクが買い手に移転しますが、FASは売り手が貨物を本船の船側に並べた時点、FOBは売り手が貨物を本船に積み込んだ時点でリスクが買い手に移転します。

詳しくは「FCAとFAS・FOBの違い」をご確認ください。

Q. FCA契約時の注意点は?

A. FCA契約時には、引き渡し場所を明確にすることが大切です。引き渡す場所を具体的に明記しなければ、費用やリスクの分担で誤解が生じる可能性もあります。また、輸出通関手続きに時間と手間がかかることもあるため、注意が必要です。買い手側は、適切な運送業者の選定やコストの管理が必要になるため、想定外のトラブルを引き起こさないよう、信頼できる運送業者やフォワーダーと連携することが大切になります。

詳しくは「FCA契約時の注意点とトラブル防止策」をご確認ください。

※IncotermsはICCの登録商標です。

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