モーダルシフトとは?メリットと注意点を解説

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モーダルシフトとは?メリットと注意点を解説

近年、物流業界では環境への配慮や効率的な輸送の実現が重要視されています。その中で注目されているのが「モーダルシフト」という取り組みです。モーダルシフトには、さまざまな利点がある一方で、転換する際には押さえておきたいポイントもあります。

この記事では、モーダルシフトのメリットや注意点のほか、事業者に依頼する際の確認ポイントなどを紹介します。

モーダルシフトとは、貨物輸送を環境負荷の小さい方法に転換すること

モーダルシフトとは、貨物輸送を環境負荷の大きいトラックから、環境負荷の小さい船舶や鉄道へと切り替える取り組みのことです。船舶や鉄道は、一度に多くの貨物を運べるため、トラック輸送と比べて環境負荷を大幅に軽減できます。

■モーダルシフトへの転換例モーダルシフトを導入することで、省エネルギー化を実現し、輸送の効率化や輸送網の集約も進みます。その結果、労働力不足の緩和や道路の混雑解消、交通事故の削減といった社会問題にも対応できるでしょう。

モーダルシフトは環境対策だけでなく、物流全体の課題解決にも寄与する重要な取り組みとして注目を集めています。

モーダルシフトを導入することで、省エネルギー化を実現し、輸送の効率化や輸送網の集約も進みます。その結果、労働力不足の緩和や道路の混雑解消、交通事故の削減といった社会問題にも対応できるでしょう。

モーダルシフトは環境対策だけでなく、物流全体の課題解決にも寄与する重要な取り組みとして注目を集めています。

モーダルシフトのメリット

モーダルシフトには、CO₂の削減や労働力不足の解消など、さまざまな問題を解決するメリットが期待されています。ここからは、それぞれのメリットについて紹介します。

<モーダルシフトの主なメリット>

・CO₂の削減

・労働力不足の解消と働き方改革

・輸送コストの削減

CO₂の削減

モーダルシフトのメリットの1つは、CO₂の削減です。国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」によると、1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロ)際に排出されるCO₂の量は、トラック(営業用貨物車)が208gであるのに対し、船舶は約5分の1の43g、鉄道は約10分の1の20gとなっています。

この結果から、貨物輸送の手段をトラックから転換することにより、船舶利用の場合は約80%、鉄道利用の場合は約90%ものCO₂排出量削減につながることがわかります。

■輸送量当たりの二酸化炭素の排出量(貨物)

参考:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」輸送量あたりの二酸化炭素の排出量

また、環境省「日本のNDC(国が決定する貢献)」では、日本政府は2021年4月に掲げた目標にて、2030年度に温室効果ガスの46%削減(2013年度比)を目指すとともに、より高い50%削減に向けて挑戦し続けると表明しています。CO₂排出量の削減は、物流業界においても緊急の課題となっており、CO₂削減の目標に着実に近づいていくことは、モーダルシフトによって得られる大きなメリットの1つです。

 

なお、三井物産グローバルロジスティクス(MGL)では、輸送時のCO₂排出量をご自身でシミュレーション、可視化できるツール「CO₂ CALCULATOR(CO₂排出量算定)」を無料公開しています。ユーザー登録等一切不要ですのでぜひ、ご活用ください。

労働力不足の解消と働き方改革

モーダルシフトは、労働力不足の解消と働き方改革の推進に寄与するというメリットも期待されています。モーダルシフトが実現した場合、トラックは「最寄りの港や駅などの転換拠点となる箇所まで」もしくは「最寄りの転換拠点から」の運転のみを担うことで、トラックドライバーの負担が減り、現在の課題となっている担い手不足問題を解消しながら貨物を運搬できます。

 

物流業界における労働力不足は、差し迫った課題の1つです。国土交通省「物流を取り巻く現状と課題」では、2030年には2015年から道路貨物輸送の運転従事者は3割減少するとされており、トラックドライバーの担い手不足について具体的な対応をしなかった場合、2030年度には約34%(9億トン相当)の輸送能力が不足する可能性があることも示唆されています。モーダルシフトは、トラックドライバー不足が深刻化する中、船舶や鉄道を活用することで人手に頼る工程を削減できる点が大きなメリットです。

輸送コストの削減

輸送コストの削減につながることも、モーダルシフトのメリットの1つといえます。船舶や鉄道による貨物輸送は、一度に大量の貨物を運べることに加え、遠距離の輸送に対応できる点が強みです。つまり、輸送距離が長くなればなるほど、モーダルシフトによる輸送コストの削減効果が期待できます。

 

また、国土交通省「モーダルシフトとは」によると、従来、モーダルシフトは概ね500km以上の長距離輸送に適した輸送方法と考えられてきました。しかし、近年では300~400km程度の輸送においてもモーダルシフトが採用されるケースも見られるようになっています。

モーダルシフトの注意点

メリットの多いモーダルシフトですが、実施する前に確認しておきたい注意点もあります。下記の4つのポイントを踏まえながら、モーダルシフトで輸送するかを検討しましょう。

 

<モーダルシフトの注意点>

・輸送時間が長くなることもある

・悪天候の影響が自動車に比べて出やすい

・船舶や鉄道への貨物の積み替えが必要になる

・短距離や中距離の移動ではコストが高くなる可能性もある

輸送時間が長くなることもある

モーダルシフトを実施する際の注意点は、輸送時間がトラックのみの輸送より長くなる可能性があることです。トラックで出荷元から納品先まで直接運ぶのではなく、船舶や鉄道による輸送ルートを経由することになるため、輸送スケジュールは船舶や鉄道の出発時刻や到着時刻に合わせなくてはなりません。

例えば、トラックが最寄りの転換拠点へ貨物を早めに搬入できていたとしても、船舶や鉄道の出発時刻まで待つことになります。また、出発拠点までの移動時間や終着拠点から納品先への移動時間を加味すると、トラックで直接輸送する場合と比べて時間がかかることもあるでしょう。

そのため、生鮮食品など、鮮度の維持が重要な物品の輸送には向かない場合があります。

悪天候の影響が自動車に比べて出やすい

モーダルシフトを実施する際の注意点は、悪天候などの影響で輸送が遅延する可能性もあることです。船舶や鉄道は天候の影響やダイヤの乱れなどにより、発着時刻が遅れることもあります。自動車による輸送においても大雨や台風、地震などの自然災害の影響を受けるものの、一般的には船舶や鉄道の輸送網よりも道路交通網のほうが早期に復旧するケースが少なくありません。

船舶や鉄道への貨物の積み替えが必要になる

モーダルシフトを実施する際は、貨物を積み替える作業が発生する点にも注意が必要です。モーダルシフトで想定される積み替え作業は、下記の4点です。

<モーダルシフトによる主な積み替え作業>

・工場にて貨物車へ貨物の積み込み

・船舶や鉄道の出発拠点での積み替え

・船舶や鉄道の終着地点での積み替え

・納入先での積み下ろし

こうした作業の過程では、「貨物がダメージを受ける」「温度変化に対応できない」などのリスクがあります。また、運搬する貨物の種類や特性によっては、積み替えの回数をできるだけ抑えたほうがよい場合もあるでしょう。モーダルシフトを実施するかは、取り扱う貨物に応じて慎重に判断することをおすすめします。

短距離や中距離の移動ではコストが高くなる可能性もある

モーダルシフトは長距離輸送においてはコストダウンにつながりますが、500km以内の短距離・中距離の輸送に関してはかえってコストが増加する可能性もあります。貨物を移動させる作業が新たに加わることで、積み替えを担当する作業員が必要になるため、移動距離によってはコスト削減効果を事前に検証する必要があるでしょう。

ただし、メリット面で挙げたとおり、モーダルシフトによって得られる効果は輸送コストの削減だけではありません。CO₂の削減や労働力不足の解消、働き方改革の推進につながるメリットもあります。モーダルシフトを推進する目的を明確にし、どのようなメリットを期待するのかによって、その費用対効果を検討することが大切です。

モーダルシフトを導入する際のポイント

モーダルシフトを導入する場合、料金や品質保持など、いくつか確認するポイントがあります。各事業者に依頼する場合は、下記の3つのポイントを事前に確認しておきましょう。

<モーダルシフトを導入する際のポイント>

・適した料金やルートになっているか

・輸送品質が保てるか

・納期のスケジュールに問題はないか

適した料金やルートになっているか

モーダルシフトを導入する際は、「利用できる港や貨物駅が出荷元・納入先の近隣にあるか」「効率良く貨物を届けられるルートが存在するか」といった点を慎重に検討しておく必要があります。

港や貨物駅が出荷元・納入先からそれぞれ著しく離れている場合、輸送効率の低下によりかえってコストが増大する可能性があります。また、輸送する貨物に見合わない輸送コストがかかるようでは利益を圧迫しかねません。輸送する貨物に適した料金・ルートになっているか確認することが重要です。

輸送品質が保てるか

モーダルシフトを導入する際は、求められる輸送品質を維持できるかも、必ず確認しておきましょう。具体的には、輸送中に発生する可能性のある振動の程度や、輸送中の温度管理が基準を満たしているかといった点です。輸送手段の変更に伴って、何らかの不具合が生じることはないか詳細に確認しておかなくてはなりません。前述のとおり、モーダルシフトによって輸送時間が長くなることも想定されます。積み替えの工程も追加されることから、貨物の破損や品質低下をもたらすことがないかを検証しておくことが大切です。

また、輸送手段をモーダルシフトにすることに伴い、輸送のための機材や用具が新たに必要になる工程がないかどうかも確認することをおすすめします。輸送品質を保つためにどの程度の初期コスト・ランニングコストがかかるのかを把握することが重要です。

納期のスケジュールに問題はないか

モーダルシフトを導入する際は、納期に合わせて輸送できるかも重要なポイントです。モーダルシフトは天候などの影響を受けやすいため、納品先が希望する納期に間に合うスケジュールを設定できるか、事前に確認する必要があります。

例えば、貨物駅や湾岸地区にて貨物の留め置きができるか、輸送時期の調整に対応できるかといった点をあらかじめ問い合わせておくとよいでしょう。モーダルシフトによって、現状よりも輸送日数が延びることも想定されます。現状よりも輸送期間が長くなる場合、どの程度まで許容できるのかを決めておき、その範囲内に収まるサービスを選ぶことが大切です。

船舶でのモーダルシフトなら三井物産グローバルロジスティクス

モーダルシフトは、「環境への配慮」や「働き方改革の推進」などにおいても、多くのメリットをもたらす取り組みといえます。また、労働力問題の解消や道路混雑の緩和、交通事故の発生件数減など、喫緊の課題となっている社会問題への対応策としても期待されています。CO₂削減に向けた取り組みをはじめ、労働力不足の解消や輸送コスト削減を実現したい事業者様は、モーダルシフトの実施を検討してみてはいかがでしょうか。

三井物産グローバルロジスティクス(MGL)では、船舶を介した輸送サービスを提供しています。従来は陸路のみで輸送していた事業者様にとって、モーダルシフトを実現するための有力な選択肢の1つとなるでしょう。

<MGLの提供するモーダルシフトの事例と特長>
・日本国内のモーダルシフト(トラックから鉄道・船舶輸送に切り替え):名古屋~門司間のRORO船輸送など、さまざまな内航船社や鉄道輸送会社を起用可能

・海外現地国内のモーダルシフト(トラックから鉄道輸送に切り替え):タイ東北部から国際港Laem Chabangまでの鉄道輸送サービスなど、海外ネットワークを活かし、現地輸送の最適化が可能

※詳しくは「国際輸送サービス」をご確認ください。

なお、海上輸送では全世界35ヵ国150都市にまたがる当社現地店、三井物産現地店、海外代理店等のネットワークを駆使し、お客様に最適なグローバルSCMのソリューションを提案しています。長年にわたるロジスティクスの経験と豊富な実績を活かし、運営受託を含む総合的なサポートを提供できる点が三井物産グローバルロジスティクスの大きな強みです。

また、三井物産グローバルロジスティクスでは海外の輸送においても、トラック輸送から鉄道輸送への切り替えによるモーダルシフトを推進しています。さらに、貨物輸送用通い容器の開発・導入により、車両台数や輸送コンテナ本数を削減するなどの取り組みを通じて、CO₂排出量の低減に貢献し続けています。

三井物産グローバルロジスティクスは、三井物産グループの物量をまとめて船社から取得する「集積運賃による強力な運賃仕入れ力」「長年精通するパートナーとのネットワーク」を通じて、競争力のある運賃を提供できることも大きなメリットです。モーダルシフトをご検討中の事業者様は、ぜひ三井物産グローバルロジスティクスのお問い合わせフォームよりご相談ください。

よくある質問ーMGLが答えますー

Q.モーダルシフトとは何ですか?

A.モーダルシフトとは、貨物輸送を環境負荷の大きいトラックから、環境負荷の小さい船舶や鉄道へと切り替える取り組みのことです。船舶や鉄道は、一度に多くの貨物を運べるため、トラック輸送と比べて環境負荷を大幅に軽減できます。

詳しくは「モーダルシフトとは、貨物輸送を環境負荷の小さい方法に転換すること」をご確認ください。

Q.モーダルシフトのメリットは何ですか?

A.モーダルシフトの主なメリットは、「CO₂の削減」「労働力不足の解消と働き方改革」「輸送コストの削減」です。特に、CO₂の削減について国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」によると、1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロ)際に排出されるCO₂の量は、トラック(営業用貨物車)が208gであるのに対して、船舶は約5分の1の43g、鉄道は約10分の1の20gとなり、モーダルシフトによる環境負荷の対策が有効といえます。

詳しくは「モーダルシフトのメリット」をご確認ください。

モーダルの注意点は何ですか?

A.モーダルシフトの注意点は、「輸送時間が長くなることもある」「悪天候などによる遅延もある」「船舶や鉄道への貨物の積み替えが必要になる」「短距離や中距離の移動ではコストが高くなる可能性もある」などが挙げられます。特に、コスト面については、長距離輸送においてはコストダウンにつながりますが、500km以内の短距離・中距離の輸送に関してはかえってコストが増加する可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。

詳しくは「モーダルシフトの注意点」をご確認ください。

 

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